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最近気になることがあったのでアップしました。
レスポールやES335、SGなどを修理・調整しているとよく見かけるのが「チューン・O・マチック」ブリッジの湾曲・変形です。下の画像は上下ともゴトーのブリッジ、GE103Bですがご覧のとおり「土台自体」が反るのです。こんなにしっかりしたダイキャストが反る?と一瞬疑いたくなりますが、長年の使用で「弦の押さえる力」によって徐々に変形してくるのでしょう。


↑長年使用してきたブリッジ↑

↓新品のブリッジ↓

これによりどんな不具合が出るかといいますと、レスポールなどの「指板アール」は12"Rと決まってます。指板のアールとブリッジのアールは(基本)同じでなくてはなりません。ところが「反り」があるとこのアールが合わず、とくに3&4弦の「弦高」が低くなってしまいます。サドル・駒がサビてボロボロになっている物もよく見かけますがこれもまた同じ不具合を生じさせます。

*上の画像はちょうど良い例があったので2015年4月にさし替えました。


 

さて、本題です。つい最近の事、ES335のフレット交換などして調整するにあたり、例によりブリッジが湾曲しているため新品のブリッジへ取り替える事になりました。山野楽器さんがGibsonの輸入代理をおこなっていた時には比較的Gibson純正パーツは入手しやすかったのですが、代理店が変わったいまこの手のパーツ入手が困難になっています。

ひとしきり探してみるとリペアマンなら誰もが知ってる(であろう?)Stewart-MacDonaldのカタログ(下記)にそのものズバリ!「Tune-o-matic」ABR-1(型番#4566)とあります。これはしめた!と思いさっそく入手しました・・・・。


カタログの表記にもちゃんと「Saddle radius 12"R」とあるのでまず間違いないなと安心していたのです。ところが入荷して裏側を見てみるとなんとMADE IN JAPANの文字が刻印されていました。その時は「ふーん、ゴトーかどこかが製造・輸出してるのかな」と。

 

弦を張り最終セットアップの段階で「弦高調整」をおこなったところ、1&6弦を同じ高さ(例えば1.2mm)にセッティングすればほぼ全弦は同じ高さになりますよね? が、しかし、このブリッジの場合は3&4弦が約0.4~0.5mmほど高い!
たかが0.4mmとあなどってはなりません。弦高は非常にシビアな部分なので0.4mmも違いがあるという事はかなりの段差です。

ここまで読んでいただいたならお分かりになると思いますが、なんとこのステュMacが販売しているブリッジ#4566(日本製ですが)、アールを確認したところ12"Rではありませんでした!

 

スキャナでブリッジをパソコンに取り込みイラストレーター上で半径304mmの円を描き、それをサドル頂点にあてがってみるとご覧のとおりあきらかに#4566は合いません。一方、個人的に所有していたGibsonオリジナルの「ABR-1」ブリッジはピッタリとアールが合います。↓下記はアップ画像↓

 


 

せっかく購入したのにガッカリです・・・もう少し詳しく調べてみましょう。

下の画像は両者を比較したものですが、矢印部分の段差・深さが違う事がお分かりでしょうか?Tune-o-maticブリッジは各サドル・駒はすべて同じ高さです(弦溝の問題がありますが、各弦のサドル・駒を適当に入れ替えても問題ないのです)。ではどうやって「アール」を作っているかというと、この矢印部分の段差によって各弦の高さを微妙に変えて12"Rにしています。


ABR-1より#4566のほうが段差・深さが深い事が分かると思いますが、これが何を意味するかというと「ABR-1より#4566のほうがアールがきつい」という事です。

 

ではステュMacのTune-o-matic #4566のアールは何?という事ですが、同じく調べたところ「10"R」でした。

これではせっかく指板アールを12"Rにしっかり整えたのに合うはずがありませんよね。

今回はとんだものをくらってしまいました。皆さんもステュMacのTune-o-matic #4566を購入する時は注意しましょう。カタログ表記は間違いです。12"Rではなく「10"R」です(2010.11月現在)。

さて、この問題はステュMacに伝えました。まだ返答がありませんが、おそらくなんらかの返事が数日中にあるでしょう。余談ですが、ブリードラヴの仕事をしていた時に「指板アールとブリッジサドルアールが違うから変更してくれ」と先方に伝えたところ「これは仕様だ。違いは承知している。我々の考えでは指板アールよりサドルアールのほうが少しきついほうがいいと思っている」との返事をいただいた事があります。。。。

 

リペアマン・クラフトマンによって様々な考え方があるこの世界。上記のブリードラヴの返答・考えに対しては特に異論はありません。そのほうが良いと感じたからこそ採用・仕様としているのだな、と受け取るまでです。
ただし、今までの私自身の経験からすると、やはり指板アールとサドルアールは同じであるほうが良いセッティングができます。アールが違うと3&4弦が高めになったり、逆に低めになったりする事は事実ですので。

さあ、我々ギターいじり大好き人間の味方ステュMacさん、どのように対応してくれるのでしょうか。。。。ネット注文&クレジットカード決済すると最短2日で商品が届く早さ。ステュMacの対応の早さ、商売としてしっかりしているところは好きです。

以上ちょっとしたネタ・発見でした!

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